非居住者に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書
非居住者に対して、国内において行う人的役務の提供の対価として退職手当等の支払をした場合には、「退職所得の源泉徴収票」ではなく、「非居住者に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書」を提出する必要があります。ただし、支払金額が年間50万円以下の場合には、提出する必要はありません。
支払の確定した年の翌年の1月31日までに、支払調書合計表とともに提出します。
なお、租税条約等により日本と自動的情報交換を行うことができる各国等に住所がある方の支払調書については、2枚提出する必要があります。
(分離課税に係る所得税の課税標準)
第百六十九条 第百六十四条第二項各号(非居住者に対する課税の方法)に掲げる非居住者の当該各号に定める国内源泉所得については、他の所得と区分して所得税を課するものとし、その所得税の課税標準は、その支払を受けるべき当該国内源泉所得の金額(次の各号に掲げる国内源泉所得については、当該各号に定める金額)とする。
中略
(分離課税に係る所得税の税率)
第百七十条 前条に規定する所得税の額は、同条に規定する国内源泉所得の金額に百分の二十(当該国内源泉所得の金額のうち第百六十一条第一項第八号及び第十五号(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得に係るものについては、百分の十五)の税率を乗じて計算した金額とする。
非居住者時代に稼得した退職金を帰国後に得た場合の日本での課税
Scenario A
帰国後支給 一般の「退職所得の源泉徴収票」(全世界所得)の個人と税務署(役員の場合のみ)への提出
Scenario B
帰国前支給 「退職所得の源泉徴収票」(国内源泉所得)の個人と「非居住者に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書」の税務署(役員の場合のみ)への提出
(退職所得についての選択課税)
第百七十一条 第百六十九条(課税標準)に規定する非居住者が第百六十一条第一項第十二号ハ(国内源泉所得)の規定に該当する退職手当等(第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等をいう。以下この節において同じ。)の支払を受ける場合には、その者は、前条の規定にかかわらず、当該退職手当等について、その支払の基因となつた退職(その年中に支払を受ける当該退職手当等が二以上ある場合には、それぞれの退職手当等の支払の基因となつた退職)を事由としてその年中に支払を受ける退職手当等の総額を居住者として受けたものとみなして、これに第三十条及び第八十九条(税率)の規定を適用するものとした場合の税額に相当する金額により所得税を課されることを選択することができる。
選択課税を選択した場合には、居住者としての申告として退職所得に係る全世界所得について申告を行うなければならないものとなる。
したがって、この場合には厳密には所得発生時にはまだ非居住者であったものの、日本の税制としては、居住者としての全世界所得課税により、所得税法上(または租税条約上)本来的には課税権のない所得(非居住者の国外源泉所得)について課税を行い、恣意的な2重課税を形成するものとなっているといえる。
そもそもシナリオAにおいては、所得発生時にはまだ非居住者であったものの支給時に居住者となった者について、日本の税制としては、居住者としての源泉徴収課税(または選択課税)により、本来的には所得税法上(または租税条約上)課税権のない所得(非居住者の国外源泉所得)について課税を行い、恣意的な2重課税を形成しているものともいえる。